「あなたの口座が詐欺に使われている恐れがあります」
「税務課からです。医療費の還付金があります」
「〇〇警察の者ですが、重要なお知らせがあります」──
これらはすべて、近年増加している“警察官”や“公務員”を名乗った詐欺の冒頭の言葉です。
高齢者を中心に、「信用できそう」「信じてしまった」と口座番号やキャッシュカードを渡してしまうケースが全国で後を絶ちません。
今回は、警察・役所を名乗る詐欺の具体的な手口から、被害に遭いやすい心理構造、そして未然に防ぐための対策までを網羅的に解説します。
Contents
「警察です」「市役所です」と名乗る不審な電話
このタイプの詐欺は、「自分は公的機関の人間である」と信じ込ませることから始まります。
特に以下のようなフレーズは、警戒レベルMAXで対応すべきです。
- 「あなたの口座が悪用された疑いがある」
- 「還付金があります。ATMに行って手続きしてください」
- 「警察官がこれから伺います。身分証を確認してください」
- 「医療費や年金の還付があるため、キャッシュカードが必要です」
実際に詐欺師たちは、役所や警察署の実在する名前や部署名を語って信ぴょう性を高めてきます。
中には「〇〇警察の〇〇です」と具体的な氏名まで偽り、実在の人物を装うケースも報告されています。
個人情報や口座情報を聞き出す巧妙な話術
一見“親切で丁寧”に見える電話のやりとり。しかし、実際は高度な話術によって被害者を誘導していくロジックが組まれています。
よく使われる話術は以下のようなパターンです。
- 「確認のために、お名前と生年月日を教えていただけますか?」
- 「あなた名義の口座が犯罪に使用されているようです」
- 「今すぐ対応すれば、あなたは加害者にならずに済みます」
- 「身分確認のために、キャッシュカードの表面を写真で送ってください」
不安を煽り、「今すぐ対応が必要です」と畳みかけるのが特徴です。
この“急がせる”圧力により、冷静な判断力が鈍り、普段なら疑うような話にも納得してしまうのです。
「還付金がある」と言ってATMに誘導
還付金詐欺は、市役所の職員や税務署を装った詐欺師が電話で「お金が戻ってくる」と告げ、被害者をATMに向かわせる手口です。
一見「お金が戻ってくるのだから得」と思ってしまいますが、その仕組みは詐欺そのもの。
詐欺師たちは、こう説明します:
- 「手続きをATMで行っていただきます」
- 「この番号を入力してください」「次にこれを押してください」
実際には、ATMを使って“送金”させているだけで、本人は「還付の操作」と思い込んでいるという非常に悪質な構造です。
しかも詐欺師は、通話をつなげたままATMまで案内し、ボタン操作を指示することで“自分で気づく時間”すら奪ってきます。
被害者が信じてしまう心理の仕組み
なぜ、明らかにおかしい内容にもかかわらず、騙されてしまうのでしょうか?
そこには人間の心理的な“思考停止”と“権威への信頼”という要素が深く関係しています。
特に高齢者に多いのが、以下の心理です。
- **「公的機関がウソをつくわけがない」**という思い込み
- **「トラブルを大ごとにしたくない」**という回避行動
- 「自分は大丈夫」と思っていたための油断
- 「早く済ませたい」という焦り
また、相手の口調や知識が専門的であるほど、「本物に違いない」と信じてしまいやすくなります。
公的機関を名乗る電話はまず疑うべき理由
原則として、警察や市役所が個人に電話で還付やキャッシュカードの回収を求めることはありません。
にもかかわらず、なぜ詐欺師はこの方法を使うのか?
答えはシンプルで、「もっとも信頼されやすい」からです。
公的機関の名前は、強い信頼と権威を持っています。そのため、以下のような状況では特に注意が必要です。
- 公務員を名乗り、金銭やカードの提出を要求
- 個人情報(口座、暗証番号、住所など)を電話で求める
- 今すぐ対応しなければ問題になると脅す
このような電話を受けた場合は、一度通話を切り、実在の機関に公式連絡先から問い合わせるのが鉄則です。
自宅訪問・キャッシュカード回収にも注意
「後ほど、身分証を持った職員がご自宅に伺います」
「カードをお預かりして、処理後に返却します」
こうした言葉で実際に“職員”を名乗る人物が訪れ、キャッシュカードを封筒に入れて持ち去るという被害が発生しています。
さらに巧妙な場合、カードの表面をコピーした“偽の封筒”をすり替える手口まで登場しています。
以下の点に注意してください。
- 自宅に来る職員が本物かどうか、名刺や身分証を必ず確認
- カードや暗証番号を絶対に渡さない
- 少しでも怪しいと感じたら、即110番通報
本物の警察官や市役所職員であれば、その場で立ち去ることはありませんし、カードの提出を求めることも絶対にありません。
実際に電話が来たときの対応マニュアル
では、実際に「警察です」「役所の者です」といった電話がかかってきたとき、どう対応すべきか。
ここでは実践的な対応マニュアルを紹介します。
- 相手の名前・部署名・連絡先を聞く(ここで曖昧なら詐欺確定)
- 「あとでかけ直します」と言って一度電話を切る
- 実在の警察署・市役所に公式番号で確認
- 不審点があれば、消費者センター(188)または警察(#9110)へ通報
- 家族・近隣住民と情報を共有し、詐欺の手口を拡散する
冷静になる時間を確保することが、被害を防ぐカギとなります。
まとめ:「本物に見える」からこそ疑う勇気を
「自分が被害に遭うはずがない」──そう思っている人ほど、詐欺師の巧妙な手口に巻き込まれてしまいます。
特に“公的機関”を名乗る電話は、その権威から疑うこと自体に心理的抵抗があるため、余計に注意が必要です。
改めて確認しておきましょう。
- 警察・役所が電話でお金のやりとりを指示することはない
- ATMで還付金が受け取れることはない
- キャッシュカードを預かる行為自体が違法
少しでも違和感を持ったら、「一度電話を切って、自分で確認を取る」。
これだけで、多くの詐欺は防げます。
あなたの大切な資産と安全を守るため、家族全員で情報を共有し、“疑う力”を身につけておきましょう。