「人脈があれば稼げるビジネスがある」
「初期費用は少しかかるけど、将来は不労所得になる」
「副業として、週末だけで月収50万円も夢じゃない」
こんなセリフで始まる“ビジネス勧誘”の裏には、実はマルチ商法(MLM)と呼ばれる違法または限りなく黒に近い販売スキームが隠れていることがあります。
この記事では、マルチ商法とネズミ講の違い、よくある勧誘手口、実際の詐欺事例、契約後の対応策、そして関わらないためのチェックリストまで網羅的に解説します。騙されないために、正しい知識を持ちましょう。
Contents
マルチ商法とネズミ講の違いとは?
まず混同されがちな「マルチ商法」と「ネズミ講」の違いを明確にしましょう。
▼ マルチ商法(連鎖販売取引)とは?
- 商品を購入し、他人に販売する権利を得るビジネス
- 自分が勧誘した人がさらに別の人を勧誘し…と組織が広がる
- 合法であるが、特定商取引法で厳しい規制対象
▼ ネズミ講(無限連鎖講)とは?
- 商品やサービスが存在しない(または名目だけ)
- 単純に「人を紹介すればお金が入る」仕組み
- 法律で完全に禁止されている違法行為
マルチ商法はグレーゾーンに見えて、実質は違法なネズミ講と変わらない構造をとっているケースが非常に多いのが実情です。特に、販売よりも「人を紹介することに重きを置いている場合」は要注意です。
よくある勧誘のセリフと流れ
マルチ商法の勧誘は、あからさまに商品や商売の話をするのではなく、最初はあくまで“人間関係を築く”ことから始まります。
▼ 勧誘時に使われがちなセリフ
- 「すごく面白いビジネスの話があるんだけど聞いてみない?」
- 「将来、時間もお金も自由になりたいと思ったことない?」
- 「今のままの働き方で、本当に満足してる?」
- 「○○さんがもう月収100万いってるよ!」
- 「一緒にやろうよ。○○だからこそ誘いたかった」
▼ 勧誘の流れ(典型例)
- 友達や知人から「久しぶりに会いたい」と誘われる
- 食事やお茶の場で近況話から「副業」「将来」「お金」の話へ
- セミナーや勉強会に誘導される
- 講師が登場し、商品や成功事例を熱弁
- 「今日決めたら割引」「今だけのチャンス」と契約を迫る
このように、時間をかけて心理的ガードを下げてからクロージングをかけるのがマルチ商法の常套手段です。
「友達からの誘い」で断りにくい心理的罠
マルチ商法が広がる最大の要因は、「信頼している友人や家族からの勧誘」によるものです。
▼ なぜ断れないのか?
- 「友達の顔をつぶしたくない」という気遣い
- 「あの人がやってるなら大丈夫かも」という錯覚
- 「押しに負けた」というパターンが多い
- 「付き合いで一度だけ…」と軽く契約してしまう
しかし、この人間関係こそがマルチ商法の最大の武器です。一度参加すると、あなた自身も「他人を勧誘しないと元が取れない」構造に追い込まれ、加害者的立場にさせられるリスクもあります。
健康食品・美容商材・投資商品を使った詐欺事例
合法を装うマルチ商法の多くは、以下のような「商品が存在する」形を取っています。
▼ 代表的な商材
- 健康食品(酵素ドリンク、サプリメントなど)
- 美容関連(化粧水、美顔器、スキンケア)
- 水素水、浄水器など高額な生活用品
- 仮想通貨やFXを題材にした投資パッケージ
- 情報商材、セミナー、スキル教材
● 事例:酵素ドリンクのMLM(20代・女性)
「ダイエット商品を販売する副業」と紹介され、初期商品として20万円分の酵素ドリンクを購入。知人に販売するように言われたが、誰も買ってくれず、在庫を抱えることに。紹介もできず「マイナスだけが残った」。
● 事例:仮想通貨の紹介報酬型MLM(30代・男性)
「初期費用50万円で仮想通貨に投資し、紹介で報酬が得られる」と説明され契約。紹介人数が増えれば月100万円も可能と言われたが、運営会社が半年後に突然消滅し、全額損失に。
契約後に気づいたらどうすべきか?
マルチ商法の被害に遭ったと気づいたら、できるだけ早く行動を起こすことが重要です。
▼ すぐにやるべきこと
- 契約書類・商品・決済記録をすべて保管
- 運営会社に連絡し、返品・解約の意思を伝える
- 消費生活センター(188)に相談し、具体的な手続き方法を聞く
- 警察または弁護士に相談(被害の大きさに応じて)
特に契約後8日以内であれば、クーリングオフ制度を活用することで、全額返金の可能性が高まります。
クーリングオフ制度の使い方
クーリングオフとは、一定の条件下で契約を無条件で解除できる制度です。マルチ商法は特定商取引法に基づく「連鎖販売取引」に該当し、以下の条件を満たせば適用されます。
▼ クーリングオフの条件
- 契約から8日以内であること(書面を受け取った日を含む)
- 契約書や商品に問題(虚偽説明など)がある場合、8日を過ぎても無効主張可能なことも
▼ 手続きのポイント
- 書面または内容証明郵便で「契約解除の意思」を通知する
- 商品がある場合は未使用で返送
- 返金・返品費用は販売側の負担が原則
消費生活センター(188)では書類作成の相談や対応手順もサポートしてくれるため、まずは連絡してみましょう。
関わらないための事前チェックポイント
最後に、マルチ商法に巻き込まれないための“自己防衛術”を紹介します。
▼ 勧誘段階でのチェックリスト
- 「すごいビジネスがある」と言われた時点で要注意
- 契約を急かされたら疑う
- 「人脈が収入につながる」という説明はマルチの典型
- 運営会社の住所・実績・登記状況を確認(国税庁などで検索)
- SNSや口コミで「詐欺」「勧誘」などのワードを含めて検索
- 信頼している友人でも「ビジネスの話」なら一旦断る勇気を
まとめ:本当の“自由”を奪うのがマルチ商法
「将来の自由のために、今頑張ろう」
「お金を得て人生を変えよう」――
そんな前向きな気持ちを利用して、逆に金銭・人間関係・信用を奪っていくのがマルチ商法です。
マルチの勧誘は、かつての友人関係さえ壊します。「自分だけは大丈夫」と思わず、冷静に立ち止まる知識と判断力が必要です。